6_4長谷部恭男講演会 緊急事態条項のための憲法改正は不要!
安倍内閣=自民党改憲案の危険性
↓講演する長谷部恭男教授
1.緊急事態条項発動条件の甘さからくる危険性
外部からの武力攻撃、内乱、大規模自然災害・・・その他法律で定めるもの、に加えて「内閣総理大臣(首相)が特に緊急と認めるときには宣言できる」とされている。←首相判断による恣意性を縛るものがなくなる!
2,発動の効果の危険性
「内閣が法律と同様の効力を有する政令を制定することができる」←内閣(安倍首相)の意思次第で既存の法律も変更できる!
←これらは、法の支配を停止し、人の支配に委ねることを意味する。
現在の法律による緊急事態法は、警察法に見られる。
警察法71条では、「(内閣から独立した機関である)国家公安委員会の勧告に基づいて首相が発することができ」、首相が警察庁長官に指示して全国の警察をコントロールできる、ことになっている。
←自民党改憲案にあるような、首相個人にフリーハンドは与えられていない。
諸外国の事例はどうか
仏、独、米の事例から、どの国でも緊急事態法の発令には、非常に難しい条件が付いている。←健全な立憲国家の証し
フランス
- 2015年11月13日パリにおけるテロ事件を受けた非常事態宣言が記憶に新しいが、これは、1995年4/3の非常事態に関する法律に基づくもので、憲法の規定によるものではない。
- 一方、第五共和政憲法には、16条の緊急事態条項がある←共和国の制度や国の独立、領土の保全、国際条約の履行が重大かつ直接に脅かされ、かつ、憲法上の公権力の適切な運営が中断されるときにはじめて発動可能だが、用件が厳しく使いにくくなっている。
ドイツ
- ドイツ基本法で、防衛上の緊急事態条項がある。:ドイツは連邦国家であり、立法・行政の権限が連邦政府と各邦政府に分割されている。
- 緊急時には連邦に権限を吸い上げ、集中させなければならず、運用が難しい。
- 基本権の制約:民間人の非軍事的な薬務の義務付けのほか、刑事手続き上の身柄拘束期間の延長、公用収容のための暫定的な補償等、極めて限定的なものにとどまる。
- 連邦憲法裁判所による監視も想定されている。
⇔日本では、災害対策基本法やいわゆる有事法制等により、現時点で必要とされる事柄についてはすでに法律上の対応がなされている。立法の必要があるのであれば、国会で制定すればいいだけの話ではないのか。
アメリカ
- 合衆国憲法のうち、緊急事態に言及している条文はごくわずかしかない。
- 第1篇第9節第2項で、連邦議会による人身保護令嬢の停止は、反乱または侵略の際に限られているとしている。
- 第2篇第3節で、大統領が非常の際に連邦議会の両院または一院を招集できるとしている。
⇔日本国憲法では、「内閣は臨時国会を召集できる」(第53条)と規定されており、「緊急」「非常」という文言が憲法の条文上現れるか否かに拘ることの不毛性はあきらか。
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参議院の緊急集会(54条第2項)以上の緊急事態条項は必要か?
↓開会の挨拶を行う井口主催者代表
- Q1.衆議院の解散中に大規模災害や外敵の侵攻が発生したとき、憲法54条の第1項の規定する期間内(解散日から40日以内)に総選挙が実施できない場合があるのでは?
- A1.太平洋戦争の最中、昭和17年4月、米軍の大都市への空襲が開始された後でも、衆議院の総選挙は行われている。
仮に、憲法の定める期間(これは、総選挙の結果が政権側にとって思わしくないと判断される場合に、政府が再度解散に訴えるリスクを遮断するための規定)を若干経過して総選挙が施行されたからといって、最高裁はその選挙結果を無効と宣言できるだろうか?
現在の最高裁は、投票価値の格差は違憲だといいながら、選挙は有効だといい続けている。
- Q2.衆議院の任期切れに非常事態が発生した場合、任期を延長するなどの措置が必要ではないか?
- A2.普段からよく考えて、必要な法律を予め作っておけばよいだけの話。普段から準備していないことは緊急時になってもできないのは、大規模自然災害に対する対応と同じ注1)。
1)大規模災害の場合、非常事態として首相に権力を集中して何ができるだろうか?むしろ事態への対応を遅らせたり、混乱を引き起こすだけではないのか。東日本大震災の際の福島原発の事故対応時、官邸からの指令が混乱を引き起こしたとの指摘がある。むしろ権限は自治体の長に集中させるべきだとの声が強い。
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不要な緊急事態条項を作る場合、問題になる事柄
- 裁判所によるコントロールは不可欠
高度に政治的な事項には介入しないとの「統治行為論」が、裁判所が緊急事態の是非について判断を下す際の障害になる。
ナチスの手口をまねるべきだと妄言する閣僚がいる安倍内閣ではとりわけ用心しなければならない。
- 統治行為論は廃止する←憲法改正が必要に。それに伴い、他の高度な政治的な問題、例えば昨年9月「成立」した安保法制関連諸法の違憲性についても裁判所で審議し、結論を出すことが求められることになる。
- 最高裁判所の人事が、今のように「内閣が任命する」形では、司法の独立は保てないので、こうした政府の人事権を縛り、例えば任命に当たり、国会の2/3以上の同意を必要とする、或いは上級裁判所裁判官の人事については、政党政治から独立した指名委員会を設置する必要が生じる。
(文責HP担当M.,T 未完←後日、修正追加の予定)
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